バックエンドエンジニアロードマップ

分散システム入門:耐障害性とスケーラビリティを実現する設計の基本

モダンなWebサービスやアプリケーションにおいて、分散システムは信頼性と拡張性の中核となる技術です。

この記事では、分散システムの基本概念、アーキテクチャ、直面する課題、スケーラビリティの戦略、代表的な技術スタックまでを包括的に解説します。


1. 分散システムの概要

分散システムとは、複数の独立したコンピュータやサーバーがネットワークで接続され、連携しながら1つの大きなシステムとして動作する仕組みを指します。

1.1 特徴

  • スケーラビリティ: ノードを追加することで処理能力を向上
  • 耐障害性: 一部ノードが故障しても全体が継続稼働
  • 並列処理: 複数ノードで同時にタスクを実行し高速化
  • 分散ストレージ: データを分割保存し、冗長性と負荷分散を実現

2. 主要なアーキテクチャ

2.1 クライアント・サーバーモデル

クライアントがリクエストを送り、サーバーが応答。構造がシンプルで多くのWebサービスで採用されています。

2.2 ピア・ツー・ピア(P2P)

すべてのノードが対等であり、ノード間でリソースを共有。ファイル共有やブロックチェーンなどで利用されます。

2.3 マイクロサービスアーキテクチャ

アプリケーションを小さなサービス単位に分割し、それぞれが独立して動作・スケール可能。分散システムの中核を担う構造です。


3. 分散システムの課題と解決策

3.1 CAP定理

Consistency(一貫性)Availability(可用性)Partition Tolerance(分断耐性) の3つのうち、同時に満たせるのは2つまでという理論。

特性説明
一貫性すべてのノードで常に同じデータを保持
可用性常にレスポンスを返す
分断耐性ネットワーク障害時にもシステムが継続動作

3.2 データ整合性と分散トランザクション

  • 2相コミット(2PC): トランザクションの合意形成
  • Paxos / Raft: 分散合意アルゴリズム

3.3 レイテンシとパフォーマンス対策

  • キャッシュの活用: Redis, Memcached
  • CDNの導入: 静的コンテンツを近距離から配信
  • ロードバランサー: リクエストを均等に分散(例:Nginx, AWS ELB)

4. スケーラビリティと負荷分散

4.1 水平スケーリング vs 垂直スケーリング

  • 水平スケーリング: ノード数を増やす(例:Webサーバーを複数台構成)
  • 垂直スケーリング: CPUやメモリなどノードの性能を強化

4.2 シャーディングとレプリケーション

  • シャーディング: データを分割保存し、個別に処理・拡張が可能
  • レプリケーション: 同一データのコピーを複数ノードで保持し可用性を確保

5. 代表的な分散システム技術

5.1 メッセージキュー / イベント駆動

Kafka, RabbitMQ, NATSなどにより、非同期処理や疎結合なサービス連携が可能になります。

5.2 サービスメッシュ

Istio, Linkerdなどを用いて、マイクロサービス間の通信制御・セキュリティ・監視を行います。

5.3 分散トレーシング / モニタリング

OpenTelemetry, Prometheus, Grafanaなどにより、システムの可視化と障害対応を強化します。


6. まとめ

  • 分散システムは、大規模かつ高可用性なシステム構築に不可欠
  • CAP定理・データ整合性・通信の複雑性といった課題がある
  • アーキテクチャ設計と技術選定が成功の鍵となる
  • マイクロサービス、メッセージング、サービスメッシュを適切に組み合わせることが重要

インフラの進化とともに、分散システムの実装は以前よりも手軽になっています。複雑な要件に対応するために、分散システムの理解はバックエンドエンジニアの重要なスキルのひとつとなるでしょう。

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