バックエンドエンジニアロードマップ

DNSの基本を理解する

1. DNSとは何か?

DNS(Domain Name System)は、インターネット上でドメイン名をIPアドレスに変換するシステムです。例えば、「google.com」というドメイン名を入力すると、DNSが対応するIPアドレス(例: 142.250.185.78)を取得し、Webサイトに接続できるようにします。

なぜDNSが必要なのか?

  • 人間は「192.168.1.1」のような数値よりも「example.com」のようなドメイン名の方が覚えやすい。
  • インターネット上のIPアドレスは変更されることがあるが、DNSを利用することでユーザーは影響を受けずにアクセスできる。
  • ネットワークの負荷を分散し、効率的なデータ通信を実現する。

2. DNSの仕組み

DNSの基本的な動作は以下のようになります。

  1. ユーザーのリクエスト ユーザーがブラウザに「example.com」を入力。
  2. キャッシュの確認 端末やISPのDNSキャッシュに「example.com」のIPアドレスがある場合、その情報が直接返される。
  3. DNSサーバーへの問い合わせ キャッシュに情報がない場合、以下のような段階を経てIPアドレスが取得される。
    • ルートDNSサーバー:TLD(Top Level Domain, 例: .com, .org, .jp)を管理するサーバーを案内。
    • TLD DNSサーバー:特定のドメイン(example.com)のネームサーバーの情報を提供。
    • 権威DNSサーバー:最終的に正しいIPアドレスを返す。
  4. 接続の確立 取得したIPアドレスを使い、Webサイトのサーバーに接続する。

3. 主なDNSサーバーの種類

DNSにはいくつかの役割を持つサーバーがあります。

DNSサーバーの種類役割
ルートDNSサーバーインターネットのトップレベルでDNSクエリを処理する。
TLD(トップレベルドメイン)サーバー「.com」「.net」「.jp」などのドメインを管理。
権威DNSサーバー実際にドメインのIPアドレスを管理し、最終的な情報を提供。
キャッシュDNSサーバーISPやローカルネットワーク内でDNS結果を保存し、処理を高速化。

4. DNSレコードの種類

DNSには、さまざまな種類のレコード(データ)が登録されています。代表的なものを紹介します。

レコード説明
Aレコードドメイン名をIPv4アドレスに変換
AAAAレコードドメイン名をIPv6アドレスに変換
CNAMEレコードドメインのエイリアス(別名)を設定
MXレコードメールサーバーの情報を設定
TXTレコードドメイン所有証明やSPFレコードなどのテキスト情報

例えば、example.com のAレコードが 192.168.1.1 に設定されていれば、example.com にアクセスすると 192.168.1.1 のサーバーへ接続されます。


5. DNSのキャッシュとTTL

DNSのクエリ結果は、キャッシュ(一定期間保存)されることで、問い合わせ回数を減らしネットワーク負荷を軽減します。

TTL(Time To Live)とは?

TTLはDNSキャッシュの有効期限を示す数値で、単位は秒です。例えば、TTLが3600(1時間)で設定されている場合、その間はキャッシュが利用され、再問い合わせが不要になります。


6. DNSの問題とトラブルシューティング

DNSが正常に機能しない場合、以下のような問題が発生することがあります。

主なDNSの問題

  • 名前解決ができない → ドメインのDNS設定ミスやサーバーの障害。
  • キャッシュの古い情報が使われる → TTLが長すぎる場合、変更が反映されるのに時間がかかる。
  • ISPのDNSが遅い → ISP提供のDNSサーバーが応答遅延を引き起こすことがある。

解決方法

  1. DNSキャッシュのクリア
    • Windows: ipconfig /flushdns
    • macOS: sudo dscacheutil -flushcache
    • Linux: sudo systemd-resolve --flush-caches
  2. 別のDNSサーバーを利用 Google Public DNS(8.8.8.8, 8.8.4.4)やCloudflare DNS(1.1.1.1)に変更することで改善することがある。
  3. nslookupdig コマンドで診断
    • nslookup example.com
    • dig example.com

7. DNSのセキュリティ

DNSはインターネットの基盤であるため、攻撃の対象となることがあります。主なDNS攻撃と対策を紹介します。

攻撃の種類説明対策
DNSキャッシュポイズニング偽のIPアドレスをキャッシュに注入DNSSECを導入
DDoS攻撃大量のリクエストを送りDNSを麻痺させるレート制限、Anycast DNS
ドメインハイジャック不正な設定変更により乗っ取り強固な認証設定

特に「DNSSEC(DNS Security Extensions)」を活用することで、DNSの改ざんや不正アクセスを防ぐことができます。


8. まとめ

  • DNSはドメイン名をIPアドレスに変換するシステム。
  • ルートDNS、TLD DNS、権威DNSサーバーを経由して名前解決が行われる。
  • DNSにはAレコード、CNAMEレコード、MXレコードなどの種類がある。
  • DNSキャッシュを利用することで高速化されるが、TTLに注意が必要。
  • DNSの問題にはキャッシュのクリアやGoogle Public DNSの利用で対応可能。
  • セキュリティ対策としてDNSSECやDDoS防御が重要。

次に学ぶべき関連技術

  • DNSSEC:DNSのセキュリティ拡張
  • BIND:Linuxでよく使われるDNSサーバー
  • CloudflareのDNS管理:無料で使える高速DNS

DNSはシンプルに見えて、インターネット全体の基盤を支える重要な技術です。しっかり理解し、実践的なスキルを身につけましょう!

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