Webサービスや業務システムを支える基盤技術の一つ、それがデータベースです。特にバックエンドエンジニアとしてステップアップするには、単なる使い方だけでなく、仕組みや設計思想を深く理解することが求められます。
この記事では、ある程度プログラミングに慣れた中級者を対象に、リレーショナルデータベース(RDB)とNoSQLデータベースの基本から、使い分けの判断基準、正規化・非正規化といった設計思想まで、実務視点でわかりやすく解説していきます。
データベースとは?役割と重要性
データベースは、アプリケーションが取り扱う様々な情報を体系的かつ効率的に保存・取得・更新・削除するための仕組みです。たとえば、以下のような場面で活用されています。
- ECサイトの注文履歴、商品情報、ユーザー管理
- SNSの投稿・コメント・通知データ
- 社内システムでの勤怠記録や売上データ
データベースの設計次第で、サービスの信頼性やスピードは大きく変わります。だからこそ、バックエンド開発者はその構造と特性を深く理解しておく必要があるのです。
リレーショナルデータベース(RDB)とは?
リレーショナルデータベースとは、データをテーブル(行と列)形式で管理する方式のデータベースです。Excelの表に近いイメージを持つとわかりやすいでしょう。各テーブルは主キーや外部キーを使って他のテーブルと関連づけることができます。
代表的なRDB
- PostgreSQL(高機能・オープンソース)
- MySQL(高速・軽量でクラウドとの相性が良い)
- Oracle Database(商用システムでの実績多数)
主な特徴
- ACID特性:トランザクション処理に強く、データの整合性を重視
- 正規化による構造化:データの重複を避け、管理を効率化
- SQL(Structured Query Language)による操作
SQLの基本操作例
-- ユーザー一覧を取得
SELECT id, name, email FROM users;
-- 新規ユーザーを追加
INSERT INTO users (name, email) VALUES ('Taro', 'taro@example.com');
-- メールアドレスの更新
UPDATE users SET email = 'new@example.com' WHERE id = 1;
-- ユーザー削除
DELETE FROM users WHERE id = 1;
-- テーブル結合(JOIN)
SELECT orders.id, users.name
FROM orders
JOIN users ON orders.user_id = users.id;
RDBはビジネスロジックが複雑で、データ整合性が強く求められる場面に非常に向いています。
NoSQLとは?構造に縛られない柔軟な選択肢
NoSQLとは「Not Only SQL」の略称で、従来のRDBとは異なる形でデータを保存する仕組みです。特に、大規模なデータ処理やスキーマレスな開発において注目されています。
代表的なNoSQLの種類
- ドキュメント型:MongoDB(JSON形式でデータを格納)
- キー・バリュー型:Redis(高速キャッシュ、セッション管理など)
- カラム指向型:Cassandra(大規模データ処理に強い)
MongoDBのデータ例
{
"_id": ObjectId("abcd1234"),
"name": "Taro",
"email": "taro@example.com",
"roles": ["user", "admin"]
}
NoSQLの強み
- スキーマレス:柔軟な構造で、開発初期やプロトタイプに最適
- 高スケーラビリティ:大規模データの分散処理が得意
- 高速アクセス:読み書きのパフォーマンスが非常に高い
正規化と非正規化:設計思想の違い
正規化とは?
データの重複を排除し、整合性を高める設計手法です。例えば、「注文テーブル」と「顧客テーブル」を分け、それぞれのIDで管理することで、同じ顧客情報を何度も記録しなくて済みます。
非正規化とは?
あえてデータを重複させて読み取り速度を最適化する設計です。アクセス頻度の高いデータを1箇所にまとめることで、JOINの必要がなくなり、処理が高速になります。
どちらが良いのか?
用途によって使い分けるのが鉄則です。管理性を重視するなら正規化、パフォーマンス重視や分析向けには非正規化が有効です。
リレーショナルDBとNoSQLの比較表
項目 | RDB(例:PostgreSQL) | NoSQL(例:MongoDB) |
---|---|---|
構造 | テーブル(スキーマあり) | ドキュメント、キー・バリュー(スキーマレス) |
操作言語 | SQL | 独自API / JSONベースのクエリ |
スケーラビリティ | 垂直スケーリング中心 | 水平スケーリングに強い |
整合性 | 強い(ACID準拠) | 柔軟(最終的整合性) |
用途例 | 業務システム、ECサイト | SNS、ログ分析、大規模分散 |
学習を進めるためのステップ
- リレーショナルデータベース(PostgreSQLやMySQL)で基本を習得
- SQLでデータ取得・更新・JOINの操作を繰り返し練習
- 正規化と非正規化の設計を比べて使い分けられるようになる
- MongoDBなどNoSQLを使った柔軟なデータ管理にも挑戦
どちらか一方だけを学べばよいという時代は終わりつつあります。むしろ、RDBとNoSQLの両方を理解し、要件に応じて最適な選択ができることが、バックエンドエンジニアとしての大きな強みになります。
これから実務に進む方も、ポートフォリオを作成する方も、まずは小さなアプリでDB設計と実装の経験を積んでいきましょう。バックエンドの核心が、ここにあります。